2020/05/01
「えらいもん見てしまった…」というのが率直な感想でしょうか。
ホラーとかサスペンスとはまた違ったジャンルの恐怖、、、。
こう、精神が追い詰められて、ぐったりと疲れる感じ。
ホラーやサスペンスものは見終わった後で日常に戻ると「ああ、自分達は平和でよかったな~」とホッとするものですが、このドラマはそうはいかない。
世界中がコロナウイルスの脅威にさらされ混乱を極めている今は特に「これからドラマみたいなことがおきてもおかしくない」と背筋が凍りつきます。
物語はそう遠くない近未来。
コロナが突然流行ったように、原因不明の性病で多くの女性は不妊症となり、世界中で人口減少の一途をたどるようになります。
そんな中アメリカではクーデターが起こり、<ギレアド共和国>という恐ろしいテロ国家が誕生しました。
女性の権利は少しずつ剥奪されていきます。
ある日突然、
会社で女性だけが解雇され、女性だけ預金凍結されクレジットカードが使えなくなり、子供を保育所に預けることを非難されるようになり、同性愛者は糾弾され…。
日に日に恐ろしい状況になっていくアメリカ。
マスクやトイレットペーパーを買おうとドラッグストアに押しかける日本人のごとく、隣国のカナダへ逃げようとアメリカ人達は空港へ殺到しますが、、、時すでに遅し。
子供を産める数少ない女性たちは召集され、子孫を残すために強制的に権力者の<侍女>にされてしまうのです。
カナダ亡命に失敗し夫や娘と生き別れになった主人公ジューンも、ギレアドの権力者である司令官フレッドの屋敷に<侍女>として配属されました。
フレッドの女だから、この日から名前は オブフレッド(of Fred)です。
着る服の色も身分によって決められています。
<侍女>は赤い服しか着てはならない。
<妻>は青い服しか着てはならない。
情熱と命を現す<赤>と、聖母マリアの純潔を現す<ピーコックブルー>。
こうやって見ると、まるでラファエロが描いた聖マリアのようですね。
しかし、抑圧された支配生活の中で「毎日全身真っ赤な服を着続けなければならない」としたらどうでしょうか?
コロナ感染防止のため外出自粛が続いていますが、「毎日全身真っ赤な服で家に引きこもらなければならない」と緊急事態法が適用されたら?
ばかげた話だと思うかもしれませんが、そういうばかげたことに大真面目に取り組まなければならず、違反したら<吊るし首>というのが、とんでもないディストピア世界(架空の最悪な世界のこと)なのです。
この投稿をInstagramで見る
想像したら、気が狂いそうになります。
実際、<侍女達>はどんどんおかしくなっていくのです。
パーソナルデザインがテーマなので、その話もしなければ(笑)
ここから本題です。
今回注目したのは、司令官の妻セリーナ役のイヴォンヌ・ストラホフスキー。
身長176㎝。
出演者が小柄な方が多いのか、とにかく大きさが目立ちます。
上から見下ろされると威圧感が半端ないです。
全身ピーコックブルー(靴も手袋もコートも、とにかく全部ピーコックブルー!)の着こなしには1ミリもスキがない。
よく見るとシルクのブラウスやウールのコート、柔らかそうな革の手袋などがいかにも上質なのが一目でわかったりするところなど「衣装凝ってるな~」と思います。
キャストの中で衣装で一番得しているのは彼女でしょうね。
この投稿をInstagramで見る
とにかく圧倒的な気品。
まさに、ザ・<グレースタイプ>。
ストレスMAXでよく煙草をスパスパ吸っているのですが、煙草を吸う姿にも品があります。
「気高い」という言葉はまさに彼女のような人のためにあるのでしょう。
セリーナが夫とカナダへ外交訪問した際に、カナダの女の子から「もしかして、あなたは王女様ですか?」とたずねられるシーンがあるのですが、誰もが「納得!!」と思うしかないほどロイヤルなオーラを発しています。(この辺はぜひ動画で見てほしいところです)
ファッショナブルの威圧感とはまた違った、あたりを払うような威圧感は、その<気高さ>から来るものです。
あと「セリーナ(イヴォンヌ)ってやっぱりグレースだわ」と思ったのは、ネタバレになるので詳しくは書けませんが、カナダに滞在している時の私服姿です。
シンプルなシャツとパンツスタイルという普段着に髪も無造作に下した姿は「普通のキレイなお姉さん」でした。
この投稿をInstagramで見る
いや、美人でスタイルもいい女優さんですし、こういう恰好でもキレイなんですよ。「グレースの仕事着/普段着スタイルはこういう感じだよね」と参考になります。
しかし、いつもの気張った奥様という立場から解放されたからか、しぐさもラフな感じになってソファに胡坐をかいてピザを食べる姿は「(どこにでもいそうな)普通のキレイなお姉さん」(笑)
<ギレアド共和国>にいた時の圧倒的な気高さを見慣れているこっちとしては「あれっ??」と拍子抜けな感じでした。
一言でいえば「オーラが消えた」のです。
(こういう細かいところの演技と演出が実にぬかりないです)
例えば、
「私は王妃よ、王妃たるものかくあるべき」
と自分を律しコントロールする聡明さ、忍耐強さ。
その抑え込んだ自制心がふと外れて、燃え上がる情熱や少女のような無邪気さが垣間見えた時。
そのギャップに人々は魅せられ、虜になるのです。
『ローマの休日』のオードリー・ヘプバーン=アン王女がまさにそれを具現化してますよね。
グレースの方はその辺を研究されると、今後美しさにますます磨きがかかるのではないでしょうか。
『ハンドメイズ・テイル』はHuluのオリジナル作品で、現在シーズン3まで見ることができます。
2週間は無料視聴できるようなので、この機会にぜひ!
エミー賞を総ナメしたほど海外での評価も非常に高いこのドラマ。
衣装やセット、音楽、描き出される世界観がとにかく素晴らしいです。
「こんなんありえへん!!」と他人事のように思えないのは、このドラマに描かれている出来事がこれまで現実ですべてあったことであり、今もどこかの国で起こっていることだからです。
いつも、悲劇は突然訪れるのではありません。
少しずつ
少しずつ
少~しずつ奪われていき「ある日気づいてみたら取り返しのつかないことになっている」というのがよくわかります。
社会が崩壊していく様が身につまされすぎて、続きが気になって止まらなくなりすっかり寝不足に…。
見終わると、政治や社会の動向に注目せざるを得なくなりますよ。
タグ: グレース, パーソナルデザイン考察